転職初日。
室内にはたった3人だけ。
最初に言われた言葉は「何をするか考えて動け。人に聞くな」。
30近くなるら私が、未経験で最後にやってみたかった【人材派遣営業】。
理由は単純に、新規や既存の顧客を相手する力が手に入りそうだから。
最初に言われた上司のありがたいお言葉を聞いて、一瞬で転職を後悔した。
未経験者の初日にそんな事言える頭の悪さに感動したよ。本当に。
結局、それから2週間。自分の覚えた仕事は求人広告の出し方と、求職者への面談対応だけ。
謎に人格否定されながら怒られる私と、知らないフリするおばちゃん。
たった2週間で、人生初めて転職代行のHPを徘徊する大人が出来上がった。
コミュ障なのもあって、明るくやっていこうと話すも空回り。
相談する人間も居ない。自宅に戻ると溜まっている家事。
最寄駅を出たら涙が止まらなかった。
スキルアップだの、やりたい事だの、キャリアのためだの考えて我慢していたが直ぐに限界が来た。
結局、仕事をするにあたって大事なものは、人間関係ただそれだけだったのだ。
悔しくて悔しくて、自己啓発系の動画や本を読み漁るが全く響かない。
一度寝てしまうと、またあの地獄の様な環境が待っているんだと考えていたら怖くて寝られない。
そこでふと、昔の自分は何がやりたかったか考えてみる。
食べることが好きで料理人をやっていた時期もあったが、腰痛が悪化して長時間立っていられなくなってしまった。
それよりも昔、学生時代。
とある転校生に私の密かな趣味であった自作の小説を読まれたことがあった。
最初は恥ずかしかったが、更新を期待しれていてとてつもなく嬉しかった。
【小説家になろう】でサスペンススリラーもどきの小説を書いても人気が出る時代。
私はなんとなく3年間毎日書き続けて、固定のファンも多少居てくれた。
楽しかったなぁ...っと、最近よく頭の中で思い出す。
いや、最近に限った話ではない。
社会人になって何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も思い出していた。
が、今に至るまで書いてこなかった。
大人になって、時間も余裕も無い。
金にもならないのなら、尚更書く時間を他に費やしたかった。
はっきり言って時間の無駄だ。
そうやって言い訳して、結局マトモな大人になろうとしていた。
それこそ、時間の無駄だった気がしてくる。
しかし今は違う。ひたすらマトモになろうと社会にしがみついてきたが、やりたかった事なんて今も昔も、小説を書くことだけだった。
小説でなくてもいい、自分の想像した世界や想い。
文章にする事の素敵さはずっと前から知っていたる。
どこかの小説家が言っていた。
「小説家の書く小説とは物語であり、素人の書く小説とは嘘である」と。
うろ覚えだから多分違う気がしているが、確かにその通りだと思う。
故に、私は嘘を書こうと思う。
前半の内容は嘘では無いが、思ったことを適当に文章へ書き連ねてみると、やりたいことがはっきりした。
自分に嘘をつき続けてきて今更だが、その時自分の思った嘘を書きたい。文章を書きたい。
やりたい事、思った事、考えていた事全てを書いていきたい。
決してここに書くことでは無いと思うが、そう思っていた時には、私はここに居た。
転職代行使ってみようかな...